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<本文から> 容貌は、鼻が高く、何となく竜に似た顔をして、あごひげ、頬ひげがふさふさと美しく、左の股に七十二のほくろがあったと、ほくろのあったことまで神秘めかしく伝えられている。ほくろの多くある人は多くは色が白いから、劉邦も色白であったと思ってよかろう。性質は快達で小事に拘泥しなかった。しかし、後に彼の宰相になった粛何が、この頃彼を評して、
「劉季(季は邦の字、当時彼は末男だったのだろう)は大法螺を吹くばかりで、仕事にはとりとめのない男だ」といっているから、決して模範青年ではない。「酒及び色を好む」と史記にもある。どちらかといえば、豪傑気取りの不艮がかった男だったのであろう。
こんな性質だから、農事にも勤勉でなく、家事にもまじめでなかった。壮年になって、試験を受けて役人となり、洒上の亭長となった。宿場長だ。駅馬のこともつかさどれば、宿場の行政・警察等のことも処理したのであろうが、史記に県庁中の役人らが心安く狩れて侮らないものはなかったとあるから、ずいぶん軽く見られていたわけだ。役目も大したものではなかったのであろう。 |
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