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          半村 良 「講談大久保長安 上

■八王子の基礎を築いたのは大久保長安

<本文から>
  八王子という土地について少しお話しさせていただきましェうか。
(中略)
 ただいまでは大変発展いたしまして、大学なども多く、東京のベッドタウンの一つという様相もございますが、この市の基礎を築きあげたのが、大久保長安なのでございます。
 天正十八年(一五九〇年)夏。徳川家康は豊臣秀吉の命令で、それまでの領地を離れ、関東へ入国いたしました。
(中略)
 長安の立場が特別だったのは、この時期家康が、長安を出来るだけ表面に出さないよう、注意深く扱っていたらしいことが幾える占州でございます。
 関東へ移ったことを、家臣たちはのちのちも合戦なみに感じておりまして、江戸討ち入り、などと唱えているくらいでございます。
 いくら家康自身が、初期の都市計画を行っていたといっても、いま申した通り関東入国には家臣印の強い批判や反対があったわけですから、江戸を自分たちを首都として建設するのにも、他国者を主に用いることはまずかったでしょう。
 そこで当時としては比較的重要でない江戸城西側の防衛を、服部半蔵らにゆだね、その親戚である長安にも、その付近へ屋敷を与えたのでございます。

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