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          半村 良 「講談大久保長安 下

■長安はスーパーマンのように働いた

<本文から>
  一時にいろんな命令を受けまして、それを同時進行でやらなけれはならないと言うのは、大変なことでございます。大和の代官はやる、岐阜の代官もやる。関東の代官頭もつとめて、東海道の宿駅制の資任者でもあって、佐渡や石見の金銀増産にも働いている。
 これを一人でやるのは、スーパーマソでもなけれはできないことでしょう。
 ところが家康はそれを平然と命令しているのです。無理を承知で長安が失敗するのを待っているならとにかく、どれ一つをとっても失敗してもらっては困ることばかりです。
 それをまた、長安はちゃんとやってのけております。
 これは長安がその一つ一つをまかせきる有能な部下を持っていたからでございます。計画をたてて、こうしようときめたら、あとは部下にまかせて別な仕事にとりかかる。そっちでも同じやりかたで部下に任せ、ハイつぎ、という調子で仕事を進めて行く。問題が起きたらそこへ飛んで行き、失敗の責任は自分が一人でとるわけです。
 こういうのは見習わなけれはいけませんな。筆者存じのお方に、以前テレビの番組を週に二十本以上もかかえている会社の偉い人がおりましてな。この方が大久保長安などと同じやりかたをなさっておいででした。
 全部規似のプロたちにまかせて、責任は全部自分が背負いこんでいる。もちろん一つ一つの企画や脚本にはかかわっておりますが、いちはんの仕事は、人にまかせて黙って見ていることでした。とても筆者などの真似できることではございません。小さな人間はつい口をだしてしまいます。
「ああ、大久保長安と言う人は、こういう人だったんだなあ」 と、感心してお仕事ぶりを拝見したものでございますが、そこで気が付きましたのは、徳川家康などという天下をとるような人たちも、長安をさらに大きくしたような人たちだったのだろうということでございました。

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