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<本文から> 織田信長、豊臣秀吉の時代、日本には英雄豪傑が雲のように出た。人の興亡盛衰が定まりなく、実力ある者なら、努力と道次第でいくらでも伸びられる時代であったからであろう、この時代にはいつも煮えたぎっているような英気満腹の人が多かった。皆それぞれに面白いが、ぼくの見るかぎりでは立花宗茂が最も見事なようだ。
豊臣秀吉が、ある時、諸大名列座の席で、
「天下に豪勇の士は多いが、おれの見るところでは、東では本多忠勝、西では立花宗茂を無双とする。日本武士の双璧だ」
といったと伝えられる。秀吉という人はほめ上手で、やたら「日本一」とか「天下一」とか言って人をおだてた人だが、宗茂と忠勝にたいするこの褒辞は誇張ではないようだ。忠勝のことはしばらくおいて、宗茂という人は個人的武勇にもすぐれており、兵をひきいての戦さにも天才的といってもよいほどの巧妙さがある。 |
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