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<本文から>
男の夜遊びはとがめだてされることではない。いやむしろ、年頃の男が、夜遊びに通うところさえもなかったら、それこそ名折れになるそのころのことだ。倫子との間がはかばかしく行かないからといって、家でごろ寝するほど不器用な男ではないのである。
たずねれば喜んで迎えてくれる女たちの二、三人はないわけではないが、婿入りするほどの相手でもないから、適当にあしらっては、こうして帰ってくる。しかし、いつまでも実家を離れられないのも男にとって、あまり名誉なことではない。婿入り先も見つけられない甲斐性なしと思われるからである。
− うん、俺もそろそろ……。
あごを撫でながらうなずく。目に浮かぶのは倫子の顔−と言いたいところだが、残念ながら、まだそこまでは行っていない。
− どんな顔立ちなのかな。小柄で年より若く見えるっていう話だが……。
返事がこないのは心許ないが、しかしまるきり脈がない、と諦めてしまうのは早いかもしれない。
− まあ、気長にやってみることだな。 |
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