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<本文から>
例えば、劉備という人間は、ある激しさがなければ人の上には立てない。そうすると、その激しさは、時には督郵に対する怒りみたいな形で表れてくる。怒りが表れてきたときに、劉備の徳の人という売り込み戦術のような発想があるわけだから、小兄貴の関羽にはできないので、弟分である張飛に「大兄貴が変なことをしてしまったら、おまえが代りにやったことにしろ」と。劉備が督郵をぶん殴ったら、さらにその後で、張飛が行ってぶん殴って外に行って「俺がやったんだ」という感じでぶら下げたりする。そういう役割を、張飛が担っていたと思います。
あの三人というのは、いつも三人で一人という関係性。これは、心情的に三人で一人というのもあるけれども、そうではなくて役割の関係性から言って三人で一人、それで人を惹きつけて来た、というふうに解釈して小説を構成しました。
そうすると一人が欠けただけでも、どこかバランスが崩れる。関羽が死んで、張飛がおかしな死に方をしてしまう。劉備が突っ走ってしまう。結局、三人とも死んでしまう。これは一人が欠けただけでも、人間の腕を失ったのと同じような状態になってしまうということです。 |
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