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<本文から>
「どうしたのだ」
出てきた劉備が、驚いたよう、に声をかけてきた。定を背負っている。これから、城内に売りに行くつもりなのだろう。
「なにかお命じいただきたくて、ここで待っておりました」
「命ずることなど、なにもない」
「それなら、その筵を俺が売ってきます」
張飛が言った。
「本気なのか、二人とも」
「男の本心を、疑われるべきではありませんぞ、殿」
劉備が、一度息を吐いた。
「実は、待っていた。二人がほんとうに来てくれるかもしれないと、心の底では待っていた。それは熱い思いだった。なにしろ、はじめて夢を語った相手だったのだからな」
「ならば、われら二人は、これより劉備玄徳様の家来となります」
「二人とも、聞いてくれ」
「家来にしない、ということ以外なら、なんでも」
背負っていた産を降ろし、劉備は二人の前に座った。
「私は、二十四歳になる。関羽はひとつ下。張飛は十七。長兄と次兄と末弟ということにしようではないか。張飛が関羽を兄と呼んでいるように、二人とも私を兄と呼べばいい」
「わかりました」
頭を下げ、それから顔だけ劉備の方にむけた。
「兄上」
関羽が言うと、劉備がほほえんだ。張飛が、はしゃいだような声をあげる。 |
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