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<本文から> 東洋の改革は前に書いたように、
●藩権力の強化
●そのための制度改革と人材登用
●そのための資金の調達
などに分類できるだろう。これは後藤象二郎を通じて得た岩崎弥太郎の意見書もかなり反映していたと見ていい。岩崎弥太郎はこれも前に書いたように開港当時の改革者野中兼山の功罪を参考にしながら、
「兼山に学ぶべきこと」と「学ばない方がいいこと」
に分けて成文した。学ぶべき点というのは、兼山が特に、
「藩内の産業振興」
に力を入れたことである。木材を主に、あらゆる産品に付加価値を加えて市場価値を高める智恵と汗の搾り出しを献策している。しかし弥太郎は、
「兼山に学ばない方がいい」
という項目を挙げ、
●産業振興はよいけれど、あまりにもそれらの品物を藩直営によって売買するのは控えた方がいい
●なぜなら、それによって商人が勢いをなくし、同時にそれが生産者への貸し金工作に変わっている
●そのために、生産者は産業振興とはいいながらも、必ずしも豊かになっていない。
●商人は、商売をするよりも金貸しにうつつを抜かすようになり、生産者を圧迫している
●そのために、兼山の改革に不信感が持たれたのは、結局誰も豊かにならないという結果が出たためである
と書いた。これは後藤も感心したし、吉田東洋も感心した。 |
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