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<本文から> 近藤勇が桂小五郎に″目こぼしりをした、というのは、こういうことである。
江戸で試衛館という五流道場を開いていた近藤は、しばしば道場破りに襲われた。えらく強い奴がきて、まごまごしていると一門が皆負けてしまう。そこで近藤は、近くの九段にあった斉藤弥九郎の道場に応接を頼んだ。
やってくるのが桂や大村藩の渡辺昇だった。ふたりとも斉藤道場の塾頭だったから強い。道場破りを叩きのめす。近藤は桂や池辺に感謝し、恩を感じる。そこで京都に入って、新撰組の局長になった後も、隊士たちに、「桂さんや渡辺さんには、絶村に手を出すな」と命じたのだ。
緊迫した幕末の状況の中にも、こういうおおらかさがあった。いい意味での″男の世界″あるいは敵味方を超えた”男の友情”が存在した。 |
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