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<本文から>
彼の人生観は、以前その片鱗を書いたように、
・人の一生は、重い荷を担いで遠い道を行くようなものだ。決して急いではならぬ。
・不自由を常と思えば、不足することはない。欲が起こったときは、困っていたときのことをだぜ。
・堪忍は無事長久のもとである。
・怒りを敵と思え。
・勝つことばかり知って、負けることをしらなければ、害がその身に及ぶぞ。
・何かあったときは、自分を責めて人を責めるな。
・及ばざるは過ぎたつに勝る。
というように、徹頭徹尾「がまんの哲学」である。彼が、
「上を見るな、下を見ろ」
といったのは、天下をとってのちのことだが、すでにこの時代から、その考え方は根づいていた。
したがって、織田信長が今川義元を討ったと聞いても、元康はすぐに行動を起こさず、何げない表情で部下にいった。 |
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