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<本文から>
しかし、いったん、浪士組に簿をおいた以上、醜い浪士のマネをして、”イチぬけた”というわけにはいかない。逆だ。芹沢のもつ思想と精神の清浄さによって、このドブネズミたちを変質させなければならない。それにはそれができる地位がいる。地位を得るのには、もういままでのように”対人恐怖症”の蔭で、ハニかんでいるわけにはいかない。ナリアリかまわず、自己の存在をドプネズミどもに知らせなければならない。
「その特効薬は何だ、おれをそういう人間に変えるのは何だ?」
と、芹沢鴨は必死で考えた。まったく逆の人間におれを変えてくれる妙薬はないものか。いや、あった、あった、洒だ、と芹沢は、突然洒の存在に手を打った。そして、思い立った日から酒杯をはなさなくなった。 |
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