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<本文から>
(若き頃に松下から暇を出されたときに、自分から主人をクビにした)
「クビにする権限は、主人だけにあるのではない。部下にもあるのだ」
下克上というのは「下の者が上の者に取って替わる」ということだが、単にそれだけではない、理念があった。おそらく、孟子の「放伐の論地」に基礎を置いている。孟子の放伐の論理は、かれのいうもう一つの権限委譲の方法、すなわち「禅譲の論理」に対置されるものだ。孟子の説は、次のようなものだ。
「人の上に立つ王は、徳がなければならない。徳というには仁の道の完全な実現だ、これが欠けたときは王は徳をもつ後継者に、そのポストを譲らなくてはならない。ポストを譲る方法が、話し合いで平和裡に行われるのを禅譲という。しかしこの話し合いが行われず、徳がないにもかかわらず、王がいつまでもポストにしがみつくときは、実力を行使してその王をポストから追うことができる。この実力行使を放伐という」 |
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