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<本文から> ここでぼくが佐藤一斉先生に改めて学ぼうという志を立てたのは、その学説や思想よりもむしろ、
「一斉先生における一期一会の出会い」
に主眼をおこうと思ったからだ。八十八年の充実した生涯を送った先生にも、ご自身が書かれた、
「人生は旅に似ている」
といわれるごとく、険夷や晴雨に出会った.そして、旅の過程では必ず多くの人に出会う。ゆきずりの人もあれば、
「こんなところにこういう人物がいたのか」.
と驚嘆の目をみはり、じっくりと話し合うようなこともある。一期一会というのは仏教や茶道の言葉だが、単に、
「人の一生でたった一度しか出会えない人、あるいはそのチャンス」
だけをいうのではあるまい。毎日会っていても、あるいはどんなに嫌いだと思う人間にも、
「学べるところ・語れるところ・学ばせるところ」
の三つの状況、すなわち互いに師・友・弟子になり得る要素を持っている。日常、ぼくたちが若い人から教えられることもあるし、また年長者や上役に教えてあげることもある。
その関係は融通無碍であって、
「時と場合による」
のだ。ひとりの人間が師になり友になり弟子になる。相手もおなじだ。そういう関係が正しい、
「一期一会」
なのだろう。そこで、本書では、「一斉先生における一期一会」
というバックグラウンドを据えながら、
「一斉先生が出合い、影響を受け、あるいは影響をあたえた存在」
を、探求していきたい。 |
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