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<本文から>
新技法を駆使し、プロジェクトチームで仕事を進める長安は、どこに行っても仕事を楽しくした。プロジェクトチーム員の給与や待遇を破格なものにし、生活を豊かなものにするために諸国から各種商人をよんだ。遊女屋も盛んにした。
当時、女の入坑は縁起が悪いときらわれたが、長安はおかまいなしにどんどん女を坑内に入れた。彼は鉱山を″公山″と″私山″に分け、公山で掘った金銀は家康に献じたが、私山のほうで掘った分は、プロジェクトチーム員に分配した。そして、さらに私山発掘には商人、遊女たちの出資を認め、それに応じた配当をした。だから長安の赴いた土地は、突然、異様なにぎわいを呈するのであった。が、喜ぶ住民たちに長安は「金銀が出る間だけだぞ。いつまでもというわけにはいかない。有頂天になるな」といった。
長安は、行く先々で"現地妻"をつくり、最高の処遇をした。当然、夢見心地になる女に、これまた「おれがいる間だけだ。おれが去ればおまえも終わりだ。よそには連れて行かない。よそに行けば、おれはその土地で新しい女を探す」と冷たい宣言をした。
長安は、生涯、一つの土地にしがみつかなかったし、精神面でもしがみつきをきらった。彼にとって永遠とか絶対とかいうものは存在しなかった。すべて消え去るもの、過ぎ去るものであった。
だから彼は、その遍性のものに全生命を燃焼し続けた。しかし、時代の流れはそういう長安を放っておかなかった。 |
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