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<本文から>
如水がいうのは、
「意見具申機関に決定権を持たせている」
ということである。如水は、死ぬ時に長政に自分が履き舌した草履と下駄の片方ずつを遺品として遺していったという。そして、ヘンなものを貰ったので考え込む長政に、
「その草履と下駄に意味はない。意味のないものに意味を求める悪いクセを、おまえは異見会から学んでしまった。もっと決断しろ。そして決断力がにぶった時は、その草履と下駄を出して、父親が死ぬ時に何をいっていたかを考えろ」
と遺言した。長政は如水のいうことをはじめて納得した。
このエピソードは、いわゆる、
「トップと参謀・軍師のあり方」
をはっきり示している。つまり参謀には仕事に限界があって、あくまでも、
「意見具申あるいは選択肢の提供」
までであって、
「こうしなさい」
と決定を迫ることは許されない。どの選択肢を選ぶかはトップの決断である。このへんが最近は少し乱れているような気がする。カン違いもあるだろう。つまり、トップ固有の権限である、
「決定権」
が、分権という名においてバラまかれているような印象を持ちがちだ。しかしこれは誤りである。決定できるのはあくまでもトップ一人であって、参謀にはその権限はない。
参謀の役割は、
・情報の収集
・情報の分析
・問題点の探索
・問題点について考え、解決策を模索する。
・複数の選択肢を用意する。
・トップに提出する。
ということだ。用意された選択肢の中から、
「これに決める」
という行為を行うのは、あくまでもトップ一人である。 |
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