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<本文から>
出会いは、人間の運命を変える。渋沢栄一が、もし平岡円四郎という人物に出会わなかったら、かれの将来は一体どういうことになっていただろうか。
平岡円四郎に会ったことによって、渋沢栄一は二つの変革をした。一つは思想的な変革であり、もう一つは、自己の能力の認識である。円四郎は、栄一を、それまでの過激な尊王攘夷青年から、進取開国の思想家に変えた。
同時に、栄一自身がそれまでまったく気がつかなかった、あるいは気がついていても、
「この才能を駆使して生きていこう」
とは思わなかった″理財″に関する能力を掘り起こした。栄一は、武蔵国(埼玉県)の豪農の息子だったから、もちろん経営についてまったく認識がなかったわけではない。子供の頃は、祖父について藍の買いつけにも出かけている。 |
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