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<本文から>
”腹立たずの会”というのは、それまで短気ですぐものを決めたがる長政を心配して、父の如水が助言して設けた、現代でいえば「合議機関」である。首脳部会議といってもいい。
腹立たずの会というのは、俗称で、正しくは、「異見会」といった。
如水はこの会を設けた時、次のような掟を設けた。
・異見会には、誰が出席してもよい。
・異見会は、月の上旬、中旬、下旬の三回設ける。
・会議の場は大広間とする。
・異見会では、人と違った意見を述べること。
・その際、身分を忘れること。
・したがって、普通なら身分の制約がある言葉使いや、意見の内容についても、一切気を使わないこと。
・そのため、互いに言い合った意見によって、大広間を出た後しこりを残さないこと。特に上層部の者は、下の者が耳に痛いことを言ってもそれを根に持たないこと。後に、人事異動その他で報復をしないこと。
・思い切った意見が交換される際には、あるいは高度の秘密が洩らされるかも知れない。しかし、その秘密は異見会以外には洩らさないこと。
集約すれば、
・身分を忘れること。
・しこりを残さないこと。
・秘密を守ること。
の三つの条件を核とする掟をつくったのである。
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