童門冬二著書
ここに付箋ここに付箋・・・
          逆境に打ち克つ人間学

■分度・勤労・推讓とは何か

<本文から>
  二宮金次郎の見直しが始まっている。金次郎は専徳といわれ、″報徳″の教えを実行し続けた。報徳の教えは、
 ・分度
 ・勤労
 ・推譲
 などの柱によって組み立てられている。分度というのは、
 「自分の分限を知って、収入に見合った支出を考えることだ」
 といわれる。しかし、金次郎にいわせれば、
 「今日一万円の収入があったからといって、一万円全部を使ってしまうのはトリやケモノと同じだ。人間はそこで倹約をしなければならない。一万円の収入があったら、八千円の支出で我慢するようにしなければならない」
 そうすれは二千円余る。余った二千円はどうするか。
 「せっかく余らせた金も、欲望に従って別なことに使ってしまうのも、やはり人道ではない。つまり欲望というのは天の理なので、人道はこの金を自分のために明日に延ばし (金次郎はこれを譲るという言葉を使っている)、明後日に延ばし、さらに来月に延はす。あるいは来年に延ばす。しかもその延はし方も、自分のためではなく他人のため、地域のために延はせば、これは立派な推譲の精神といっていい」
 といっている。そうしてこの推譲が実現されれば、その推譲を受けた側が、
 「この恩に報いなければならない」
 という報徳の精神がわくと説く。
 ここでも、分度を設け倹約し、その余らせたものを他に譲るという考えの中には、「天の理に背く人道の理がある」と、人間の意思学童を説く。
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■事業が成功するか失敗するかの根本原因は一にも人物二にも人物

<本文から>
 「尊徳翁は十分の五で暮らせといっているが、それは無理だから自分は十分の八で暮らした」
 ということになる。十分の二は余らせる。その余らせるというのは、金次郎流にいえば、
 ・まず自分のために余らせる。
 ・次に家族のために余らせる。
 ・他人のために余らせる。
 ・地域のために余らせる。
 ・社会のために余らせる。
 ・国家のために余らせる。
 と次第にエスカレートさせていく。そしてその根本にあるのはあくまでも、「至誠」即ち「誠を尽くす」という気持ちだ。
 安田善次郎に次のような言葉がある。
 「総べて、一個の事業の成功するか失敗するかの根本原因は、一にも人物、二にも人物、其の首脳となる人物の如何によって決することを言明して憚らない。また成功の要件は、次の四項に帰するのであを。
 第一の要件は事業の性質如何である。
 第二の要件は利益ある事業でなければならない。
 第三の要件は四周の情勢である。
 第四の要件は其の局にあたる人物の如何である」
 解説するほどむずかしいことをいっている訳ではない。要するにすべての事業が成功するか失敗するかの根本原因は、一にも人物、二にも人物であって、そのトップとなる人物の資質如何によって決まるといっていい。また成功の原因は次の四つだ。
 第一は事業の内容や目的がどういうものかということだ。
 第二は利益が見込める事業でなくてはならない。
 第三は事業のおかれたまわりの状況がどうかということである。
 第四はその事業の最高責任者がどんな人物かということだ。
 現在でもよく、
 「人が決め手だ」
 といわれる。
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■危機に面した時には、発想の転換が必要だ

<本文から>
 現在は決してノーマルな状況ではない。どんな企業でも現在置かれている状況はすべて、「危機」といっていい。
 この「非常時における危機」を解決するのには、ノーマルな状態における方法を駆使していてもダメだ。
 「異常時における異常な方法」が必要になる。異常時における異常な方法には、「常識を度外祝したやり方」が求められる。異常時における異常な方法を駆使するということは、
 「いままでの発想を、根本的に変える」
 ということだ。よくいわれる、
 「発想の一八〇度転換」
 が必要になる。
 「まさか」という、その″まさか″を、実行しなければならないこともあるのだ。実行の前には、当然考え方がある。実行方法を転換させるには、考え方を変えなければならない。
 そういう意味では、二宮金次郎の唱えていた主張の中には、いまの危機に面した、わたしたちの目からウロコが落ちるような新しい発見がたくさんある。たとえば金次郎は、
 「世の中には、天の理と人の理がある」
 と主張する。その天の理と人の理をわかり易く説明するのが、本章の初めに説明した有名人″水車の法則″である。
 わたしたちは水車をみていても、水車の回転はそのまま「天の理」に従っているのだと思と水車自らが自分の意志をもって、途中で川から身を起こし、自分の意志によって回転しているなどとはだれも考えなかった。それを金次郎は水車の回転を、
 「水車は半分は天の理に従い、半分は人間の理に従っている」
 といい切る。
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