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<本文から>
「貴様たちには、およそ人間を観る目がないな。士を遇する情けもない奴だ。-はや
くその縄を解いてやれ」と、案外な言葉であった。
それもその害。曹操はこの許渚と悪来とが、火華をちらして夕方に迫るまで闘っていた一昨日の有様を、とくと実見していたので、心のうちに(これはよい壮士を見出した)と早くも、自分の幕下へ加えようと、目算を立てていたからであった。
曹操から、俺の敵と睨まれたら助からないが、反対に彼が、この男はと見込むと、その寵遇は、どこの将軍にも劣らなかった。
彼は、士を愛することも知っていたが、憎むとなると、憎悪も人一倍強かった。-許堵の場合は、一目見た時から、愉快なやつと惚れこんで、(殺すのは惜しい。何とかして、臣下に加えたいが)と、考えていたものだった。 |
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