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<本文から>
ばろばろに朽ちたる世とは、農代に対して超然としてきた守護。地地制のことであった。農民自身か火力をもち、その階層から国人、地侍を出す世になっているのに、大森氏も三浦凡も、気づくことなくその上に立ち、虚位を実質ある支配権だと思ってている。早雲の場合、いきなり農代の支配者になる。かつて小グループごとに農民をちまちまと支配していた旧地頭や、国人・地侍を家臣化し、行政と軍事の専門家とする。いわば一国をもって一体のかたらにしようというもので、それ以外に、領地維持ができなくなっている零細地頭を立ちゆかせることもできず、また現実にこの世の中心になりつつある国人・地侍をひき立てててゆくこともできない。
早雲のような者を、のちのことばで、
「戦国大名」
という。かつての守護ではない。
大名は、自立している。室町体制からいえば、いわば恣意的に広域行政をとりしきる者である。それによって領内の警察権を一本にし、また侵略しようとする外部勢力に対しては士と農を一つにしてこれに当たる。
こういう存在は、室町体制からみれば、世を崩す者であり、下克上のきわみともいえるし、総じていえば大悪党であった。ついでながら悪党とは、室町初期 − 南北朝時代 − の一種の法制用語で、法制による正規の武土でない類似武装者のことをいう。室町初期のこの言葉の意味からいえば、国人・地頭さらには足軽、それらはいっさい悪党であった。
早雲は、その悪党集団の大親玉ともいえな〈はない。 |
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