|
<本文から>
庄助は、勝手にしろ、と言いたかったが、この短気な日本語を表現すべき文章がうかんで来ないまま、じつと白い紙をみつめた。それをみて、天祥先生は庄助が自分の指摘に服したと見、両限から憎悪を消し、慈しみに似た笑顔をひろげた。庄助は天祥先生の笑顔を見るのがはじめてだっただけに、あまりの新鮮さにひきこまれて微笑った。
先生は、満足し、さらに要求した。
「汝、スデニ服ス」
すぐさま毛都督閣下に謁し、その旨を言上せよ、我は日本国差官にあらず、一降倭たるのみ、と。
(朝鮮国の懸念はそうだったのか)
庄助は、目の前の霧がはれる思いがした。
自分が、一降優にすぎない、と毛都督に表明することで、毛都督の背景に日本がある、というかれの朝鮮への虚喝も意味をうしなう。庄助がいうであろう公式発言を天祥先生は朝鮮宮廷に書き送るにちがいないのである。となると、朝鮮宮廷における親毛泥も勢いをうしなわざるをえない。
(が、この天祥先生自身、朝鮮における親毛派のはずだが)
このへんは、わかりにくい。 |
|