第1回「御台所への決心」 　篤姫は天保6年（1835年）島津氏の分家・今和泉家第5代忠剛の長女として生まれ、於一（おかつ）と命名される。囲碁や史書を詠むことを好み、男子の通う塾に男装して潜り込んだり、下級藩士と身分の差を越えて交流するなど型破りな行動を繰り返す。その行動力が藩主・島津斉彬の目に留まり、島津宗家の養女として鶴丸城に迎えられる。その際に斉彬に篤姫の名を与えられる。老女・幾島に宗家の姫としての立ち居振舞いを教育される。そして斉彬から一橋慶喜を将軍継嗣にすべく密命を受けて将軍・家定の御台所として大奥に入ることになる。二度と帰れぬ旅立ちとなった。

	第2回「大奥入城」 　時の将軍家定は病をもち、言葉も明瞭でない家定に後継ぎは期待できないが、大奥には、将軍家を支えられるようなしっかりした夫人を迎える必要があった。 　篤姫は安政3年（1856年）京都の貴族、近衛忠煕(このえただひろ)の養女となる。しかし江戸に入ったものの、入奥の段取りは進まなかったが、一橋派の阿部老中から婚礼の許可が降りる。豪華な婚礼調度品を西郷隆盛が調達し、諸道具を運ぶだけで2か月余もかかったと、江戸っ子の評判であったという。12月に将軍家へ輿入れした。

	第3回「天璋院篤姫」 　南紀派が多数を占める大奥での慶喜擁立工作は難航する。一橋派の盟主阿部正弘が6月17日に病死し、南紀派の彦根藩主の井伊直弼が大老に就任。また、篤姫自身、慶喜より対抗馬の慶福に君主の器を見たことから苦悩することになる。一度は幾島の懇願に折れて慶喜を推薦するものの、最終的には「嫁いだからには自分は徳川将軍家の人間である」として家定の意向に従うことを決意する。 遂に慶福を将軍継嗣とする旨公表された。 　7月6日、かねて病弱であった夫の家定が35歳で病死。夫婦の交わりのない、たった1年7か月足らずの結婚生活であった。その10日後に斉彬（49歳）が鹿児島で急逝。以後、安政の大獄が吹き荒れ、24歳の若さで落飾した天璋院は大奥を束ねることになる。

	第4回「徳川の母」 　安政7年（1860年）井伊直弼が桜田門外の変で暗殺され状況が変化する。文久2年（1862年）、公と武の融和のため、孝明天皇の妹、和宮が第14代将軍家茂（慶福）に降嫁することになる。28歳の若い天璋院は、姑として、自分より更に11歳若い和宮を御台所として迎え入れねばならなかった。 　京出身の女官達と大奥女中たちの対立に巻き込まれるが、柔軟な姿勢を貫きつつ大御台所として両者の関係調整に腐心し、すれ違いながらも和宮との仲は少しずつ雪解けしていく事になる。 　慶応2年（1868年）、第2次長州征伐のさなか、将軍家茂が大阪城で21歳の若さで急死。今度は和宮が静寛院と号し、夫と同年齢の若さで御台所と対する立場となった。

	第5回「無血開城」 　慶応3年（1869年）、徳川慶喜は大政を朝廷に奉還を断行すると大いに困惑してしまう。しかし勝麟太郎に戦を避けるために小松帯刀や坂本龍馬が奔走していた事を知ると、大奥と徳川家は自分が守る事を表明し、静寛院や本寿院の支持を得て大奥を結束させた。 　慶応4年、鳥羽・伏見において旧幕軍と薩長軍とが全面衝突し、戊辰戦争が始まった。緒戦は錦旗を掲げる薩長軍の圧勝。慶喜は大阪城を脱出し江戸へ帰ってしまった。 　薩長との戦に敗れ逃走してきた慶喜に、篤姫は個人的な感情を抑えて家族として慶喜を救う事を約束する。江戸総攻撃の直前、勝に養父斉彬の書状を持たせて西郷の心を動かし、遂に江戸城無血開城へと導いた。そして江戸城の明け渡しを前に混乱する奥女中たちには、全員の行く先は自らが責任を持つと宣言した。 　天璋院は、一橋邸から紀州邸、尾張外山屋敷と、江戸から東京に変わった騒乱のなかを転々とし、明治10年（1877年）千駄ヶ谷に落ち着く。そして徳川家名の相続した徳川家達の訓育に全精力を注いた。明治16年11月20日に息を引き取る。49歳。墓所は、寛永寺、家定の墓に並んで眠っている。